ベンチャー経営者の視点で「デザイン経営」を考える

■デザインと経営を考える

最近、デザインと経営の関係性について考えるキッカケがあった。一般的にデザイン経営については、デザイナー側が話題にする話で、経営者側が経営の視点で語ることはまだ少ない気がする。

そこで、私自身もベンチャー経営者として、デザインとベンチャー経営がどう機能し合うかを考えることにした。

 

■ベンチャーの世界でデザインが評価された!Airbnbのケース

ベンチャーの世界でデザインが注目された1番のキッカケは、Airbnbの存在だと思っている。

ベンチャー企業のメッカはシリコンバレーだが、当初のAirbnbの経営陣(デザイナーがバックグラウンドである)に対しての評価は低く、バリエーションはエンジニアメインのテックカンパニーに高く付いていた。

 

しかし、Airbnbは、実験的に一部の地域で、Airbnb上に掲載する宿泊先の写真を改善すれば、確実に閲覧数や申込数が向上することを発見した。

ベンチャーキャピタルは、◯◯に投資をすればX X数値が改善される、というROIがわかりやすいものには投資の紐が緩んだ。デザインが経営の数値を改善する手段となり得る世界的に有名になったケースだ。

 

私はデザインの専門家ではないのでこれは私見の定義だが、Airbnbが宿泊先について魅力的にユーザーに届けたように、デザインとは人に対してのコミュニケーションや伝わり方を左右するものと言える。

 

■情報過多時代のコミュニケーションコントロール

広告業界出身者であれば、現在のこの時代において、流通情報量が消費可能な情報量をはるかに上回り、情報過多な社会であるという話は何度も聞いている。

そのような情報オーバーな環境において、どの情報を選択するのか、といえば、伝わりやすい、自分の感性や興味にあっている、なんだか信用出来そうだというものだろう。

とすると、この、伝わりやすさ・感性・信用といった人の心に訴えるものをコントローラブルに調整していくジョブが「デザイン」と呼んでもいい。

デザインが人、もの、こと、サービス、プロダクト、企業など様々な事柄に対しての「イメージ」を作り、それを選ぶ・付き合う・信用する・お金を払うといった意思決定に影響を及ぼす。

だから、デザインは「経営」だと言うことも出来る。

 

■マネジメントとデザイン

私はベンチャー企業の経営者として、例えばデザインを下記のような事柄に当てれられると考えている。

ーロゴ、コーポレートHP、サービスHP、営業資料、事例集、オフィス、資金調達資料、採用説明資料、企業文化資料、社内イベント

 

もちろん、上記にあるもの以外でも、消費者・従業員・株主・パートナーなどあらゆるステークホルダーの接点でデザインは機能する。

これらすべてのタッチポイントに対し、確立したアイデンティティを持ってデザインを当てていけば、それが企業文化として体現される。

デザインで表現しているものに企業も近付いていくようなこともある。

芯にある自分自身と、外とのつなぎ目がデザインで、外への魅せ方だけでなく自らもデザインに合わせて変化・進化していく。

少しわかりやすく例えるなら、スポーティなファッションにNIKEのスニーカーを履いていれば、あの人はスポーツが好きな人だと思われるし、自分自身もスポーツが出来るような気になっていく。

「周囲の目」だけでなく「自身の心持ち」も変えられる。言わばマネジメントなので、これもまたデザインは「経営」なのだ。

 

■進化するデザイン

そして、デザインは社会の変化、自己の成長に合わせて変わっていくものだ。

例えば、コカコーラのロゴは当時の流行や、社内のイベント、社会的に大きな出来事を機に少しずつ変化していった。

https://www.cocacola.co.jp/history_/logo01#ath

 

「デザイン思考」という言葉があるが、これはデザイナーが持つ観察眼をビジネスに応用した思考法だと認識している。

デザイン思考を持って、社会の機微や企業の変化を観察していった結果、デザイン自体を変化させるべきだと意思決定したのだと思う。

 

■デザインと企業価値

まとめると、デザインはビジネス的な係数改善に繋げることもできるし、マネジメントにも用いることができる。そしてそれは時代に合わせて変化や進化もさせられる。というのが私なりのデザイン経営の理解だ。

 

もし本当にデザインが経営として機能するなら、今後のトレンドとしてデザインを株式に変えていくような挑みが増えると予想している。

つまり、デザインが企業価値を高められるのであれば、優秀なCDOは自身のリソースの対価を株式でもらうはずだ。

人材市場の観点から、デザイナーの単価が人の10倍になることは難しいが、金融市場の観点であればデザインしたものが100倍〜1000倍に成長することは決しておかしな話ではない。

例えば、企業価値が5.000万円の企業に対し、3%の株式と交換する形で、プロダクト・コーポレートのデザインを提供する。

その企業が500億円の企業価値に成長すれば、13億円となる。つまり自ら手がけたデザインが13億円の価値になったと言ってもいい。

デザインが企業価値を高めた、という事例がAirbnbの他にも増えていけば、デザインの影響力は市場で評価され、デザイナー人口も増えていく。

そして、デザインが明確に企業のUSPとなり、企業価値の一番の土台だった、と評価される企業が増えたなら、「デザイン経営」は本物だったと言える。